デリバリーサービスの急成長 〜フードデリバリー編〜
台湾ではフードデリバリーサービスの導入率が伸びていますが、新型コロナウイルスの影響で、外食から自宅で食事を済ませる人が増えるなど、改めて注目が集まっています。
今回は、デリバリーサービスの急成長~生鮮食品雑貨編~の続編として、台湾で急速な成長を続けるフードデリバリーサービス市場を深掘りしていきます。
台湾フードデリバリー市場の成長
台湾経済部(経済産業省)より3月に発表された報告によれば、2020年1月から2月までの、台湾飲食業界のデリバリー売上高は前年比で5.2%増となり、デリバリー未導入の飲食店の売上は、年間で8%減になると予測しています。
また、2020年のデリバリー及び宅配導入率は53.8%にのぼると言われており、2018年の40.1%に比べ、かなりの成長市場と言えるのではないでしょうか。
出典:台湾経済部統計所HP
台湾フードデリバリーの特徴
日本のデリバリーサービス最大手と言われる出前館は、全国加盟店数約20,000店と言われています。一方、台湾最大手のfoodpandaは、日本の九州ほどの面積である台湾において50,000店以上が加盟店しています。台湾でのデリバリーサービスの浸透度の高さが伺えます。
台湾を訪れたことがある方はご存知かもしれませんが、台湾は各地に夜市があり、最近では夜市の小型屋台も多く加盟しています。日本で例えるなら、夏祭りの出店の焼きそば屋さんやたこ焼き屋さんがUber Eatsで注文できるようなイメージでしょうか。こういった小型屋台の加盟も台湾フードデリバリーの大きな特徴です。
また、最近では実店舗を持たないバーチャル店舗が急増しています。台北地区の地価が年々高騰しているため、台北で実店舗を構えるとなると、お店にとっては家賃だけでかなりの負担になります。また、人件費も抑えられることから、デリバリーだけで営業しているバーチャルレストランが増え、売上を伸ばしているそうです。最近は日本でも実店舗を持たない宅配専門の飲食店(ゴーストレストラン)が少しずつ浸透していますね。
台湾の主なフードデリバリーサービス
トップシェアを占めるのが、日本でもおなじみのUber Eatsといち早く台湾でサービスを始めたfoodpandaです。その他に国内企業のfoodomoや有無外送があります。
foodpandaに続いて参入したシンガポールのhonestbeeは2019年6月に台湾市場から撤退。また、イギリスのdeliverroo戶戶送はAmazonからの出資を得ていたにもかかわらず、今年4月に撤退しました。
deliverroo戶戶送の撤退により、現在foodpandaとUber Eatsが台湾デリバリーサービスの二大巨頭として業界を牽引しています。
レストランの加盟店ステッカー
写真:ノマドスタッフ撮影
フードデリバリーサービス大手6社
各社利用率を見てみると事実上foodpandaとUber Eatsの一騎打ち状態となっている台湾フードデリバリー市場。
参考:凱度洞察KANSTAR調査
※honestbeeとdeliveroo戶戶送は既に台湾撤退。
台湾デリバリーサービスの二大巨頭
foodpandaとUber Eatsの大手2社について少し紹介します。
1.)foodpanda
■2019年デリバリー業年間売上高:約15.8億USドル
■台湾加盟店数:約50,000 店
foodpandaは、主に東南アジア圏を中心に進出を進めており、台湾以外にタイやカンボジア、マレーシア、フィリピン、シンガポールなどにも進出、13ヵ国でサービスを展開しています。
利用率を見るとUber Eatsとわずかに差をつけてfoodpandaが一歩リードしています。
2012年にどこよりも早く台湾へ進出を果たし、自社発表によれば、2019年の総注文数は進出当初と比較して1000倍、会員数は35倍にまで増えたそうです。また2020年1~2月の業績は2019年12月と比較して2~3割増とのことでした。
2.)Uber Eats
■2019年デリバリー業年間売上高:約13.8億USドル
■台湾加盟店数:約20,000 店
台湾市場ではfoodpandaを追いかける形になっているUber Eatsですが、世界的に見れば、foodpandaの倍以上となる36ヵ国でサービスを提供しています。膨大なビックデータを有するUber Eatsは、AIと独自のビッグデータを駆使し、消費者一人ひとりの好みのメニューを分析。より緻密で精度の高い、消費者にフィットするサービス提供を目指しています。
台湾のビジネス誌『商周』では、2社のことを“熊貓攻「多」、Uber Eats攻「精」”と表現していました。意味は「数」で勝負するfoodpanda、「質」で勝負するUber Eatsです。何かと比較される2社ですが、宣伝広告の規模の大きさからも、各社の競争の激しさが伺えます。
信義区にあるMRT市政府駅周辺の広告の様子を比較してみたいと思います。市政府駅周辺は、台北市内でも有数の百貨店や大型書店、シネコン、バスターミナルが密集した都会的なエリアです。またビジネスと商業の複合型になっているビルも多く、週末はショッピングで賑わい、平日はオフィスワーカーたちが集まる台湾有数の繁華街です。
下の写真は、駅に直結している統一百貨店前の広告です。
4月末に撮影した統一百貨前foodpandaの広告
写真:ノマドスタッフ撮影
5月中旬に撮影した統一百貨前Uber Eatsの広告
写真:ノマドスタッフ撮影
foodpandaとUber Eatsの競合2社が時期を同じ場所に大々的な広告を出していることがわかります。
台湾フードデリバリー今後の課題
成長を続ける一方で、台湾フードデリバリー市場にも課題があります。その一つとして挙げられるのがモバイルペイメントの普及率の低さです。
多くの店で決済は「クレジット又はデビットカード決済」か「代引き」を選択できるようになっています。カード決済はすべてのサービスで、初回利用時にカード情報を入力しなければならない手間はありますが、2回目以降からは入力不要なので、カード決済を利用する人がほとんどです。
政府系シンクタンク資策會(MIC)によれば、2019年の台湾のモバイルペイメントの普及率は62.2%、2025年に普及率は9割を超えることになっています。モバイルペイメントの普及に伴って、フードデリバリー市場もさらに拡大するであろうという見込みです。
もう一つ大きな課題となっているのがドライバーの雇用問題です。これは世界でも同様に発生している問題のようですが、台湾でも未だデリバリープラットフォームに対する完全な労働基準や法令が定まっていません。いわゆるプラットフォーム型雇用と呼ばれるもので、foodpandaやUber Eatsはドライバーを個人事業主として位置付けており、ドライバーは労働者として扱われず、労働保障も受けられません。
今後台湾でも次第に法整備されていくと考えられますが、しばらくはドライバーの雇用問題は続きそうです。
foodpandaドライバーバイク
写真:ノマドスタッフ撮影
記事担当 台湾ノマド Kより
日本にはない海外のデリバリーサービスや、加盟店の多さなど、台湾ならではの特徴があることが分かりました。コロナの影響で爆発的に利用者が増えたというより、この数年で着実に普及率が高まっている印象の方が強い台湾デリバリー市場でした。しかしながら、前回の記事にあったように、コロナの影響によって、コンビニやスーパーなど飲食店以外でのサービスの利用が増えるなど、時代の流れに柔軟に対応しながら進化を続けるデリバリーサービスは今後も注目です。
参考記事一覧
數位時代 (BUSINESS NEXT) 2020年3月11日 『外送平台產值上看6兆元!全球餐飲瘋科技,4大趨勢延燒中』
經濟部統計處2020年4月6日 『外送及宅配助餐飲業抗疫』
商周雜誌2020年4月22日 『Foodpanda總座獨家專訪:我要找出生鮮外送市場的規則!』
大數聚2020年4月10日 『「戶戶送」的短命意味著外送泡沫化?台灣外送市場的3大缺點才是殺死平台的關鍵因素』
Kantar 凱度洞察
上記の情報は台湾政府や台湾の報道機関等が発信した情報を弊社で翻訳して日本の方にお伝えしているものです。誤訳や分かりにくい点がありましたら、順次、修正していきますので、こちらからご連絡ください。
コメント